【同人再録】TRIPOD365!-4

1.

 

 

 正方形のダイニングテーブルに、所狭しと並べられた料理。
 いずれも暖かな湯気を上げ、目にしただけで食欲を誘う。料理が得意である了が一品一品、冷凍食品を使わずに作り上げた品々である。肉が無いと不貞腐れる盗賊王の為に、三人では些か食べきれないのではと危惧される分量の生姜焼きの皿が真ん中に。そしてサラダと小鉢がいくつか。
 かぐわしい匂いに釣られた盗賊王がソファからテーブルへ移動し、バクラも部屋から出てきた。
 いつもどおりの夕食。いつもどおりの風景。
 違うのは――
「おい宿主、オレ様の茶碗がねえぞ」
「味噌汁もねえ」
 男二人が手伝いもせずに着席し口にした通り、テーブルには火を見るより明らかに足りないものがあった。
 了の分は揃っている。足りないのは二人分の茶碗と味噌汁の椀と箸。
 了の背中は何も語らない。淡いブルーのエプロンの結び目が、腰をかがめた時に揺れただけだ。
「宿主、聞いてんのか」
 返事をしない了に苛立ったのか、バクラが少しばかり語尾を荒げて呼ぶ。
 そこで漸く、了は振り返った。手には二人分の茶碗――の、うちの一つは茶碗というよりどんぶりだったが――と椀が乗った盆。何だこれから持ってくるところだったか、とバクラは視線をテーブルに戻す。盗賊王は既に鼻歌交じりで生姜焼きをつまみ食いしようとしているところだ。
 とん、と軽い音を立てて、テーブルに盆が置かれる。
 同時に二人の動きが止まった。
 食器の間、盆のど真ん中に、見覚えのある卓上カレンダーが鎮座していたからだ。
「……………………」
「……………………」
 バクラと盗賊王の硬直を、了の眼が交互に見る。左、右。
 たっぷりの沈黙中、つけっぱなしのテレビから聞こえるバラエティ番組の笑い声が滑稽だった。
 盗賊王の顔に、バレたか、やべえかこりゃあ、と書いてある。一方のバクラは硬直のち凝視したものの、咄嗟の状況判断能力は彼の方が上だった。先に視線を持ち上げたのはバクラの方だ。同じ色の瞳がばっちりと出会う。
 了は笑った。淡く、口元をほころばせるように可憐に。
 何か云わねばとバクラが口を開く。その前に、
「ごまかさなくていいよ」
 先手を打たれた。底知れない笑みが空気に亀裂を作る。
 了は盆をテーブルに乗せたまま、静かに自分の席に着いた。かたんと椅子がフローリングを擦る音さえ、妙に耳に響く。
 そう、了は知っていた。正確には、知った。
「リビングのカレンダーがね、先月でおしまいだったんだよね。ほら、買ったの去年の夏だったから、七月終わりなの。それでバクラのカレンダーを臨時で使わせてもらおうかなと思って」
「………」
「勝手に部屋に入ってごめんね」
「いや、まあ、いいけどよ……」
「それで、カレンダーに変な印がついてるなーって思って。何だろうって考えてたら、コレ」
 と、了は昨日の日付を指さした。そこには赤いインクでマルが付けられ、その前の日には黒。交互だったりそうでなかったりだが、偶に黒のインクで印の上にバツがついている。
「バツのところは、バクラとエッチしなかった日。ただのマルの日は、普通にした日」
 ちら、と、了がバクラを見る。
「赤い印のところは、バクラと――あ、お前じゃないよ、おっきいバクラとした日」
 今度は瞳が、盗賊王を伺う。
「しかも来週まで印がついてるね」
 これ、どういうこと?
 淡い笑みは絶やさないまま、了は二人に問いかけた。
 本当は問いかけなくても分かっている。ここまで情報を揃えられたら、子供だって分かる。
 二人はセックスする日を決めて、それぞれ了に手を出していたのだと。道理で最近、どちらかが乱入してくるということが無いと思っていた。
 妙にバクラが苛ついていたり、盗賊王が駆け落ちしようだなんて云ったり、普段の生活では怒らないようなことが連続していると不思議に感じてはいた。
 けれど了は信じていたのだ、それだけ二人が、自分を思ってくれているのだと。やっと三人の生活が上手く回り始めたと、心から嬉しく思っていた。
(そんなんじゃなかった)
 現実は違う。彼らは了に秘密で勝手に割り振りを決めていたのだ。当人をのけ者にして、隠して――カレンダーが見つからなければ、もしかしたらこれから先ずっとそうだったかもしれない。
 そう気づいた時のショックは計り知れなかった。バクラの自室、机の上に伏せられていたカレンダーを手にして、彼女は暫し立ちつくしたのだ。
(ボクに秘密で、ボクのこと、勝手に)
 その瞬間、怒りは無かった。
 無性に悲しかった。
 ふつふつと沸いてきた感情も怒りに似た何かであって、二人に愛想を尽かす気持ちはない。ただ、黙っていることだけは嫌だった。
 意地悪なバクラ。自分勝手な盗賊王。
 二人とも好きだ。嫌いになんかならない。
 でも黙ってされるがままになるのだけは御免だと、強く思った。だからこんなことをしたのだ――ご機嫌な夕食の舞台を台無しにしてまでも。
「……ボクは物じゃない」
 カレンダーを指さしたまま、了はぽつりと云った。
 了、と盗賊王が呼ぶ。その先の言葉は決まっていないのか、いかにも気まり悪げな声だった。顔を上げず黙る了を見、言葉よりも雄弁なもの――温度で感情を伝えようと、了の肩へ手を伸ばす。
 盗賊王の脛を蹴って、バクラがそれを止めた。テーブルの下でがつんと結構な音がする。
 盗賊王が睨むと、バクラは更に強い目で睨み返してきた。
 触るな、今日はてめえのターンじゃねえ。
 と、青く鋭い二つの瞳が物語る。こんな時までゲームを優先するかと盗賊王は舌を打った。了が俯いているのを確かめてから、視線で語らう二人だ。
(そんなこと云ってる場合かよ、どうにかしねえと了泣くぞ)
(泣いたから何だってんだ。こいつの涙なんざ珍しくねえ)
(状況が状況だろ。ちっとやべえぞこりゃあ)
「ボクに云わないで、こんなことしてっ、ボクの気持ちとか、何にも考えてくれなかったの」
 無言の口喧嘩を遮る、了の声は掠れていた。先程の底知れぬ笑顔など微塵もない。俯いたせいで表情は伺えなかったが、長い髪の簾、その隙間から覗く唇は震えていた。
 庇護欲と加虐心を同時に刺激する涙声に、バクラも此度はぞくりとする。手を伸ばしたくなる。否、伸ばしてもいいのだ、今日は自分のターンなのだから。
 しかし了は理解している。こういう時に一番初めに触れてくるはずの盗賊王が手を伸ばそうとして止めたこと。その理由を。指さしたカレンダーが全て物語っている。
 無音の膠着状態はどれくらいの時間だったか――十分かそこいらか。少なくとも男二人には、三十分以上の沈黙に感じた。
 静寂を壊したのは、ごく小さな音だった。
 ぱたぱた、と、カレンダーの上に、了の涙が落ちた。
「ボク、っ、こんな風に、三人でなんか、いたくない、」
 堪えきれなかった透明な粒は、言葉と共に更にひとつ、ふたつ。滴は水溶性のインクを滲ませて、今日の日付がどちらの印だったかもあやふやにする。
 もう耐えきれない――そんな風に、盗賊王の喉が唸った。
「ッてめえ!」
 椅子がフローリングに転がる音と共に、バクラの罵声が響く。
 制止を振り切り、盗賊王は了を抱きしめていた。
「ふざけんな、おい!」
「――泣くなよ、なあ」
 怒声を無視して、盗賊王は静かに泣く了の頭を胸に抱え込む。黒いシャツに暖かい涙が染みて、やるせない気分になった。
 泣かせたくてしたことではない。本当だ。
 だが、了の気持ちを考えたかと問われたら――その通りだった。
 全く考えなかった。ただ自分のものにしたいとそればかりで、バレてもフォローでどうにかなると思っていた。泣く、とも思っていなかった。
 かといって悪いことをしたとも感じない。男だったら当然だと云い切れるゲームだったから、乗った。だから謝るのもおかしい。泣いて欲しくない。全部混ざって、結果、抱きしめるのが一番だと――否、そんなことは全て後づけで、とにかく泣く了を抱きしめたかったのが単純な本音だろう。
 引き寄せられたことで堰が切れた了は、より一層、派手に泣き声を上げ始める。ばかばかバクラのばかひどいやつだ二人ともひどい。涙声が響く。
 ひとまとめにして泣く了は、それでも綺麗で可愛かった。
 潤んだ目が、盗賊王に抱きしめられながらもバクラを睨む。ぎゅっと心臓を掴む視線に、バクラもまたぐっと喉を詰まらせ――そして、
「……勝手に触ってんじゃねえ」
 文句を云いながら、了の髪に手を触れる。さりげなく盗賊王の足を踏みながら。
 彼の考えていることは、盗賊王とは少し違う。ばれたら了が泣くであろうことは想定済みだった。始末に負えなくなるだろうということも予測していた。だからこそカレンダーを伏せておいたのだ。苦く思っているその理由は、バレた原因が己にあるから、というのが強い。
 了がバクラの部屋に入ってくることは滅多にない。鍵こそ掛けていないが、入るなと云えば、今まで了は侵入してこなかった。完璧に過信していた。これで隠匿は完璧だと。
 万が一ゲームのことがバレるとしたら、盗賊王が原因になる以外になかった。そうしたらお前のせいだ、お前の負けだと云ってやればいいと、そういう計画だったのに。
 全てが明るみに晒された今、思った通りに了は泣いて、思った以上にひどく傷ついている。仲間外れと物扱い、その二つが余程ショックだったのか。
 何か云わねば。だが、泣きながら罵倒する了の声が――髪に触れた途端、後ろ手にバクラの服の裾を掴んできた掌の強さが、言葉に蓋をする。
 息が詰まる。恐らくこれは愛しいという感情だ。酷く厄介な恋情というものだ。
 抱きしめる盗賊王も、静かに触れるバクラも、こればかりは同じことを思う。
 形にする術を持たない二人は、ただ了を受け止める他なかった。
「っどして、こんなことしたの、ボク、こんなことされるほど、ひどっ、ひどいこと、二人にしたおぼえ、ない」
 抱きしめられること暫し。料理が冷めきった頃、しゃくりあげながら了は二人にそう云った。
 涙を吸って重たくなったシャツに頬を押し付けたまま云う言葉に、バクラと盗賊王は向かい合う形で視線を合わせる。
 おいこいつ分かってねえぞ、どうする。
 責めたらまた泣くぞ。云えねえだろ、てめえがどっちつかずだから悪いんだろって。そんな目配せが往復。
 何か云おうとした盗賊王を指の動き一つで制し、バクラは自分を指した。ちょっと黙ってろ、オレ様が云う――そんな風に物語る。
 口はバクラの方が上手い。失敗したら拾ってついでにこいつを悪モンにしちまおうと彼なりに狡猾なことを思った盗賊王は、発言をバクラに譲った。
 バクラは一つ息を付き、了を振り向かせると、
「なあ、宿主サマ」
 そう、甘い声で双子の片割れを呼んだ。
 気持ちが悪いほどの優しい様子だった。盗賊王の腕に鳥肌が立つ。幸いと云うか、誰にも気づかれることはなかった。
 首を横に向けさせられた了は、まだ赤い目元でバクラを睨む。言葉を封じる泣き声は収まっていた。その目元を指でなぞりつつ、バクラは続けた。
「悪かった。でもなァ、コッチの言い分も聞いてくれよ」
「いい、ぶん?」
「ああ。オレ様もこいつも、てめえを自分のモンにしたくてしょうがねえんだ。そこんとこ理解頂けねえ?」
 なァ? と、バクラは盗賊王に目配せをする。察した盗賊王はすかさず、ああそうだなと頷く。
「宿主サマのお気持ちはようく分かってるぜ。三人で仲良く、ってのがてめえの理想なんだろ。幸せそうにそんなこと云われちゃあ、こっちはそれをおおっぴらにぶち壊すなんてできねえよ」
「けどなあ、やっぱ誰にも邪魔されねえで、了を可愛がりてえんだ。だからこうやって、こっそり日替わりにしてた、ってわけさ」
「そうそう。男心ってのも汲んでくれよ」
 決して責めず、されどやんわりと棘を刺す。こういう時だけ連携のいい男二人は口裏を合わせていく。
「てめえのことが好きだからだぜ、了」
「すき、だから……」
 泣き腫らした脳に、言葉はすうと染みて響く。嬉しい言葉なら尚更。
 好きだから。だからこんなことをした。
 自分一人のものにしたいから。でも、了が三人で居たいと云ったから。
「オレ様達なりに考えてんだ。だから、そう泣いてくれンな」
 とびきり甘やかす声音でバクラが囁くと、了はすん、と鼻を啜り上げ、窺うように、青と紫の瞳を交互に眺めた。
 双方ともに薄く笑っている。それは了には、お前が好きで堪らないと囁かれているように感じられた。
 了の我儘を壊さないように、それでも彼らの望みの為に。ぎりぎりの境界線でやらかしたことなのだと二人は云う。そんな風に囁かれたら、了も意固地に泣き続けることもできない。
 だってそれは愛情のなせる業なのだから――と、バクラはそう云っている。盗賊王も頷いた。
 途端に居心地ときまりの悪さを感じた了は、ぐしぐしと鼻を啜って、自分を挟む男たちの顔を見上げた。痛む目元をバクラの指が擦り、力強い盗賊王の腕が頭をぽんぽん、と叩く。
 ボクは間違っていたんだろうか。我儘を云い過ぎたんだろうか――そんな後ろめたさが胸をひたひたと浸し始める。それこそがバクラの狙いだとも知らずに。
 されど。
「……でも、ボクは、三人でいたい……」
 ちくりと感じる棘を理解つつ、それでも覆せない主張を一つ、ぽつりと了は呟く。
「二人とも、好きなんだ…… 選べないよ」
 たとえば、それならどちらかを選べそうしないとずっとこうやって日替わり制でお前を扱う、と云われたとしても、了は決めることが出来なかったろう。
 今が幸せすぎて、この幸せが欠けるなんて考えたくもない。我儘だと分かっていても、どうしても譲りたくない。
 どうしたらいい? 了は先程とは違う意味の涙をぼろりと零した。ごめんなさいと、何に対してだか不明である謝罪を口にして。
「三人じゃ駄目なの? どうしても、仲良く出来ないの?」
 縋る声に、バクラと盗賊王は再び顔を合わせた。
 此度は盗賊王の方が、何やら思惑のある表情で口角を持ち上げている。バクラの背中に嫌な予感が――この場で考え得る限りこいつが思いつくことはこれしかなかろう、という断定的な予感が、嫌な汗になって垂れた。
 そして同時に、悔しいことにそれがこの場を収め今後もまた円滑に生活を送れるというたった一つの方法だということも理解していた。
 無言を肯定と受け取り、盗賊王は笑いの意味を含めて鼻を鳴らず。
 顔を上げた了は、胸に頬を押し付けたまま盗賊王を見上げた。
 盗賊王はそんな了を安心させるように軽く頷き、舌の上で一応吟味してから、言葉を吐いた。
「前にも云ったろ、オレ様とアイツは恋敵なんだぜ」
「っ……」
「でもまァ、了が橋渡しをしてくれンなら――ちっとは仲良くできるかもしれねえな」
 なあ兄弟?
 にやにやと笑いながら、語尾はバクラへと投げる。バクラは苦い顔をして、これから彼が何を口走るか理解しきった顔で、まあな、とだけ答えた。
 了は首を傾げる。橋渡し? と。
「ボクが何かしたら、二人とも仲良くなれるの?」
「ああ、オレ様とアイツ、二人を相手にしてくれりゃあいい」
 了はますます首を傾げる。やっぱりそうか、と、バクラはこっそり溜息だ。
 意味ありげに、盗賊王の手が了の頭から首筋へと移動していく。重たくかかるうなじの髪を掻き分け、素肌へ――ひたりと触れると、ぴくんと了の肩が震える。
「え、何、なに……?」
「――宿主」
 思わず身体を翻したところを、バクラの手が掴んで留める。盗賊王の厚い胸に了の背中がぶつかり、ずいと近づいたバクラの顔が目前だ。
 盗賊王の手は首ではなく腰へ。がっちりと、前後から捕まえられたことに気が付いた了は、今更ながらに狼狽した声を上げた。
「何、どういうこと……」
「相変わらず鈍いな、てめえは。
 ――要は三人で楽しみましょう、って、あのバカは云ってんだよ」
 その意味が分からないほど、了は初心ではなかった。性的な手ほどきならばバクラにいやというほど受けている。口も手も、それなりに経験はある。そんな彼女が唯一体験していないことが、二人以上でのセックス、である。
 それをしようと盗賊王は持ち掛けた。それならば三人で楽しめて、了を介してバクラとも『仲良く』することができると。
 理屈で理解していても顔には出る。目に見えて不愉快そうなバクラを、盗賊王はにやけた顔で眺めた。
「そう不本意な面すんなって。オレ様だって好きで云ってんじゃねえんだ、ただこれがいっとう丸く収まるってことはてめえだって分かンだろ?」
「その割には随分と愉快そうだな」
「オレ様はてめえと違って心が広いからよ。ああ、ガキにはちいっとばかし冒険が過ぎますってか?」
「ちょっと、二人して勝手にっ……!」
 またしても了の意見そっちのけで進められそうになる状況を、流されてなるものかと小さな唇が意見する。ボクはまだしたいなんて云ってない――訴えると、近づいたバクラの不機嫌な顔が何云ってんだと文句を云った。
「他に方法はねえんだ、てめえも腹ァ決めな。いつもどおりマグロでいりゃあ良い」
「サービスして頂けるならそれに越したこたねえけどな」
「だ、だって仲良くって、ボクそういう意味で云ったんじゃ――っあ!」
 未だぐだぐだと首を振る了の口を黙らせるには、実力行使が一番良い。了を知り尽くしている二人はそれぞれに唇と耳朶に軽く歯を立てた。
 自然、バクラと盗賊王の顔が近くなる。互いの息さえ触れる至近距離にまで寄った青と紫がいっとき、睨む気配を見せてまみえる。
 先に目を細めたのは盗賊王だった。
 いい加減開き直れよ高校生。
 バクラは暫し沈黙。
 疲れたら途中でリタイヤしてもいいんだぜおっさん。
 そして笑み。相反し合う二人の笑みの邪悪さは、鏡に映すよりもよく似ていた。
 ゲームはドロー。第二ラウンド開始。
 最早勝敗も無くなってしまった。ゲームを始める前よりも更にどろどろであやふやになった関係性を鍋で煮るように、バクラと盗賊王と了と、三人の身体がフローリングの上に折り重なった。