【♀】【R18】無題2

コレのワンシーンを半田がまた描いてくれたので喜びのあまり続きも書いた。がっつり挿入注意。

 

 

 

酸素が薄くて死にそうだった。吸っても吸っても、肺の内側が熱くなるばかりだ。それは互いに同じなようで、皺くちゃになったシーツの上で荒い息を吐いている了も、綺麗な形の眉を寄せて苦しげだ。
柔い了の皮膚を舐めて、食んで、齧って、吸い上げたせいで、あちこちが汗と唾液で濡れている。官能に味があるならきっとこれそのものだ、と断言できる、甘い体液だ。うざったい長い髪を肌にまとわりつかせて、それが不快で、どうにも何故か、そんな感触すら気持ちがいい。
鬱陶しいシャツを脱ぎ捨てたのが少し前。一度果てたのも、そのもう少し前。
「熱ッちいな、クソが」
零れてくる前髪を後ろに撫でつけて、バクラは吐き捨てる。
これが自分の声か、と思うほど、声が掠れていた。互いの身体の間で生まれた熱と湿気を吸い込んでいるのに、喉が渇いて仕方ない。頭の悪くなるような甘い二酸化炭素が空気に混じって、それを吸ってまた吐いているのだから当然か。この部屋の中は最早ヒトにとっての牢獄だ。多分意識を失うまで出られない。理性を無くし、ただの動物になり果てるための密室だった。
「ぅあ、ぅ、や、」
瀕死の悲鳴を上げている、了の白い腹が不規則に上下に凹んで膨らんで。それを真上から眺めていると、まだ埋まったままの肉がすぐさま反応して堪らない気分にさせる。あそこの内側に、皮膚と肉のさらに向こうの内臓に、雌の臓器の内側に、今叩きつけた濃い精液が絡みついていると思うとぞくぞくする。柔らかな収縮を繰り返し雄を飲み込む従順な孔。ノックもせずに押し入る強盗の有様で入り込んだというのに、了は嬉々としてそれを受け入れた。腰を持ち上げ、反らせて、少しでも奥に奥に届くように、前後に揺すって強請ったのだから同罪だ。リスクも何もかも、扉の向こうに置いてきた。
肩で息をしながら、バクラは了の痴態を見下ろす。舌先を絡めて吸いあって濡れた唇と垂れた唾液の跡、噛み跡が濃く残る首筋、硬く育った乳首もまだ乾いていない。掴んだままの腰骨が汗で滑る。湿った下肢の茂みに、こちらもはしたなく勃起したままの真っ赤に熟れた雌の芽。そして、雄を咥え込んでひくついている淫裂。
絶景だと、口元が持ち上がった。
「――ば、くらぁ」
ひとつ小さく噎せてから、了が唇を震わせて、呼んだ。
瞳を細く撓らせて、バクラは視線を顔に戻す。達したばかりで痙攣している身体で、了は懸命に、手をこちらに伸ばしてきた。
「ね、バクラ、ねぇ」
甘ったれた声に、更に口角が上がった。性欲とは違う何かが腹の底から喉に向かってせり上げてきて、心臓を掴まれる。了の望みは言葉にしなくてもすぐにわかった。もの欲しげにとがった唇が雄弁過ぎて、問い直す必要すらない。
下半身の楔はそのままに上半身を倒すと、すぐに首に腕が回された。息が絡む。熱っぽく湿った空気をまたお互いの間で交換して、まずは舌から。それから、唇。
「んむ、ぅ」
吸い上げるとちゅる、と音がして、鼓膜からまた興奮する。背中を這う甘えた指先がくすぐったい。先ほどはあんなに強く爪を立てた癖に、慰撫するように撫ぜてくる。擦過傷の上を温い指先が通り過ぎるとぴりぴり痛んだが、どうせ傷だらけになる予定の背中だ、痛みなど既に、快楽のスパイス以外の役目はない。
うっとりと口を吸い、吸われる了の酩酊した表情を、バクラは半分まで閉じた瞳で眺めていた。あんまり幸せそうだから意地悪がしたくなる。薄い先を甘噛みして捕えてから吸うと、先ほど乳首にくれてやった刺激を思い出してか、立てた膝がきゅうと内側を向いた。息が再び上がり出す。こうなることも、もう、言うまでもない。
「宿主、」
垂れた唾液の跡を舌で辿って、耳朶に唇を押し付けてバクラは呼んだ。うん、と返ってくる声は期待に濡れている。もうおしまいだなどと互いに思っているはずもなく、そうだよなァと喉で笑ったら、正直な身体はすぐに反応を返した。
反応には反応で。ひくひくと収縮して熱を求める内側を、まずは、ずるうり。埋めた性器を殊更にゆっくりゆっくりゆっくり引いて、だらしない雌の道を、愉しむ。
「んん…――ッ」
じれったそうな悲鳴をあげて、了は腰をくねらせた。行かないでと追いすがる粘膜を残酷に裏切って、引いて引いて、一番太い部分が引っかかるまで、バクラは腰を引っ込める。
「や、ゃだ、いっちゃや、やだよう」
熟れた柿の色になった瞳を潤ませて了が縋ると、また背中から高揚した。こいつそんなにオレ様が欲しくて欲しくてたまんねえのかそうかそうだよなァ、と蕩けた脳の端で嬉しそうに自分が言って、その有様を自覚して、また、昂る。
「おら、抜けちまうぞ、ちったあ締めて引き止めろって」
そのままゆるく腰を揺すって、バクラは了の、すっかり締まりが悪くなってしまったゆるい入口の感触を楽しむ。くちくちと粘度の高い淫音は、平素の了ならば耳をふさぎたくなるだろう。そんな音がこんな場所から洩れていて、それを喜んで、先ほどから持ち上げた尻をシーツに戻すことも出来なくなっているだなんてと、逃げようとするかもしれない。
だが今はそんなよそ事を考える余裕も理性もどこにもなく、雄を引き止めようと雌の器官は必死だ。最高だった。絡みついてくる肉の収縮で男性器にしゃぶりつかれる様を、永遠に味わっていたい。
「う、ううぅ」
そうしていよいよ泣き出しそうになった了の、髪が絡む耳元に、バクラは吐息ごと言葉を流し込んだ。
「安心しろって、宿主」
うわごとのようにいじわるしないで、と訴える、細い声をバクラの喉笑いがかき消してゆく。意地悪だなんてとんでもない。むしろこれからが本番で、これからが、へたくそなりに雄を喜ばせたご褒美が始まるのだから。
だから言ったのだ、安心しろ、と。
「全ッ然、足りてねェんだから、よ!」
――そう、飢えは全く満たされていない。
語尾で思い切り、根元までを叩き込んだ。
「ひぅぅっ!?」
衝撃におかしなことになった悲鳴を上げた、了の爪先がシーツを派手に掻いた。
身体を倒している所為で、バクラは深く引いて深く穿つ動き繰り返せない。その代わりに、いっとう奥までねじ込んで、あとはそこでしつこくねちねちと居座る動きを繰りかえすことにする。ぎゅうと強く搾り上げられる感触。精が込み上げてくる。ここに居座ってここに流し込みたい欲望が、自然と笑いになって溢れる。喉を震わせると、ひどい形に膝を開き爪先を突っ張らせ、尻を持ち上げたまま痙攣している了がついに泣いた。ぼろ、と大きい雫が零れ、重ねた頬の隙間に染みる。すぐに汗と混じって、何だか分からなくなった。
「ひぃ、や、ぃや、やだコレ、いっぱい、やだァっ」
「嘘つけ、滅茶苦茶喜んでンじゃねえかよ、もっともっとって言ってんぜ」
「いっぇ、ない、やぁ、こわい、だめ、だめッ」
「ちっともヤじゃねえだろが、ホントのこと言ってみな、聞きてえンだよ」
そうだ、聞きたい。恥も外聞もない強請りが聞きたい。想像するだけで堪らないのだから鼓膜で感じたらそれだけで射精したって可笑しくない。
「アッタマ悪ィおねだりしろよ、ホラ、オレ様がお願いすることなんて滅多にねえだろ? 優しい宿主サマは叶えてくれんだろ? お前のクチから聞きてえんだよ」
「う、うう、」
尻に腰を細かく揺すりつけながら、バクラは猫なで声で訴えた。お前の言葉が欲しい、それじゃないと満足できないと、それこそ頭の悪い言葉で言う。耳からすぐに脳に達したその声がずぐずぐに了の羞恥心を溶かすことを期待して、甘い声で、つとめて優しく、しかし興奮を隠さない乱れた呼吸と一緒に。
そうすると――すぐに、折れる。
「……き」
「もっかい、ちゃんと」
「き、すき、それすき、」
「どれだ? 言わなきゃわかんねェ」
「バ、バクラので、一番おく、ぐって、して、そのままぐりぐり、される、のすき」
「こうか」
きちんと言えたご褒美は与えねばなるまい。腹の裏側、突き当たりに深く押し込み、交尾の動きで細かく擦り付ける。てっとり早く種を打ち込むための動きを、了は求めていた。望み通りの刺激に白い喉が反る。耳元で甲高い絶叫。
「だめああああッ、駄目、だめぇバクラそれもうッ、あ――ッ!」
身体中で喜んでいるくせに、泣くほど気持ちがいいくせに、首を振って、腰まで振って、了は矛盾だらけだ。そのままぐりぐりと中で円を描いてかき回してやると、更に高い、猫が鳴くようなさかりのついた声を上げて応じてくる。言う事とやる事がちぐはぐなところは嫌いではない。頭がおいついていない、本能的に恐がって、けれど愛情でたまらなく気持ちよくなっているのがあからさまでこちらも余計に興奮する。先ほどからそんなことばかりだ。互いに煽って、煽られて、天井知らずの快感で舞い上がって、どうにかなってしまいそうだ。否、もうなっているのか。
「宿主、やどぬし」
笑いながら、揺さぶりながら、上ずった声で名を呼んでいた。唇を耳孔に押し付けて吐息ごとくれてやれば、響くベッドの軋みにも荒い呼吸にも負けないだろう。応えて、ばくらあ、と、了が情けない悲鳴を上げる。
「あー……クソ、たまんねえ、ッ」
すげえイイ。
抱きすくめて、身体で身体を押さえ付けて、逃げ場を無くさせた格好で縦横無尽に蹂躙する、この圧倒的な愉悦は何だ。たちの悪い麻薬にでもかかったのか。また精が込み上げてくる。陰茎をびりびりと伝って熱が漏れる。じわり。染みる感覚。もう駄目だ。
「ッ、あ、」
バクラの方から、声が漏れた。何の予告もなく注ぎ込まれた精液に、驚いた了がえ、え、なに、と舌と頭が足りない声で言い、すぐに理解して、やあ、とひとつ切ない音を鼻から漏らす。
「と、とめないで、ボクも、きもちいのちょうだい」
ずるい、と、必死な声で訴えられた。浮かした尻を振って早く早くと強請る。こちらは気持ちよく注ぎ込んでいる最中なのだからもう少し余韻に浸りたいが――まあ、いい。あとでまたゆっくり味わうことにする。
バクラはすう、と息を吸い込んで、まだ跳ねている自身を省みず、再び大きく、腰を引いた。