【♀】ヒキガネweb再録 EXTRA / Gang Gang Youngster. 04【R18】

「……?」
買った女で処理しようとして、結局最後まで致せなかった。了を忘れたくて足掻いて手を出した彼女では役不足で、燻る熱を溜めこんで帰宅して。そうしてああしてこうなった。たった数時間前のことだが、もう遠い過去のことのようだ。
お互いに我慢などという苦行を強いられる理由がない。了を我慢させるのはなかなかどうして楽しいが、盗賊王自身が急角度の雄を宥められない程度に漲っている。軽口を叩けるのは慣れと意地の為せる業だ。本音を云うと興奮のあまり喉が渇いて仕方ない。
「てめえの嫌がった別の女とは、最後までやってねえの」
「そ、うなの? なんで?」
「何でだろうな」
了の裸体が重なって上手いことできませんでした、などとみっともない発言は出来ない。誤魔化し誤魔化し、了の頭から背中へ、背中から腰へと手を滑らせていく。
やはり肉の薄い尻だった。濡れて張り付くショーツ越しに軽く揉むと、猫が鳴くような声を上げて了が身を捩る。
「ホントはもうちっと手で気持ち良くしてもらうつもりだったんだけどよ」
「んん、やぁ、っ」
「やーか。じゃあしょうがねえや」
今日のところは、あちこち疼いてしょうがない可哀想な了を優先してさしあげよう。嘯いて、薄い布と肌の隙間に指を差し込む。切羽詰った了は片手を盗賊王の雄から離し、自分で布を引き下ろした。
膝のあたりまで下ろしてしまうと、身を隠すものはもうない。小さな臍も目立つ恥骨も、髪と同じ色の茂りも全てが盗賊王の目に晒される。
半裸は見たことがある。全裸を想像したこともある。
実際に目にするのは初めてだ。
女の裸など見飽きるほど見てきたのに、何故かごくりと喉が鳴った。こんなやせっぽちに欲情する日が来るとは思わなかった。
「後ろ向いて、尻出しな」
匂いなどとっくに消えているだろう。もう浴びる必要のない、邪魔なシャワーを盗賊王が捻って止める。
正面から繋がろうにも、身長差が問題だ。先程揉んだ尻を軽く叩いて促すと、了は大人しく壁に手を付き背中を向けた。骨が皮膚を突き破りそうなほど目立つ肩甲骨、その間から一房流れる髪が川の水のようだ。
「どこもかしこも白ぇな、てめえは」
「?」
思わず呟いた感想。了が振り向き、意味が分からないのか首を傾げた。
見られることに羞恥心はないらしい。それよりも余程我慢がつらいのか、情欲に煙る青い瞳で求めてくる。
口で早くと強請られるより、目の前で下肢を悶えさせる方が訴求力が高い。そのことを無意識に理解しているらしい。
「やーらしい奴」
細腰を捕まえて密着させると、探るまでもなく入口が分かった。寸止めと前戯、二つの刺激でとろとろに開いたそこは、今にも蜜が滴りそうな程濡れている。
「んぅっ……!」
雄を待つ入口へ先端を押し付けただけ。それだけで、了の唇からは甘い吐息が漏れた。
――やっと手に入る。
不意に訪れた実感が、盗賊王の唇を笑わせた。
ずっと欲しかった女。欲しいことを否定し続けて足掻いて、結局やっぱり欲しかった女。そして、悪夢から自分を引き上げる女。
そいつを今から貫くのだ。
「っ……たまんねえ、な」
吐き出した息と一緒に、上ずった声が漏れた。
長く味わっていたらまた了にせがまれる。盗賊王は短く息を吸って止め、潜り込むための体制を取った。
「そんじゃあ、お邪魔するぜ」
頭のてっぺんから尾骨まで、真っ直ぐにびりびりと駆け下りてくる刺激の波――
イタダキマス。
そのまま乗って、一気に内部へ侵入する。
「あ――……ッ!!」
了が背中を反らせ、痛みと快感が混ざり合った絶妙な悲鳴を上げた。
意外だったのは内部の狭さだ。あんなにバクラとまぐわっているのだからと最悪緩いのも覚悟していたが、一番太い部分で抵抗を感じた。きついのだ。それも結構な具合で。
「っう、あ、いた、痛い、っ」
「おいおい、力抜けよ。ハジメテじゃあるまいし」
「抜いてる、よ、あっやっ揺らさないでっ」
髪を乱して、了は首を振る。咥え込んだ入口は盗賊王の視点からよく観察できた。裂けてこそいないものの、一杯に広がった肉色の縁が苦しそうにひくついている。
「おっきい、から、っ、ボク、バクラのしか、知らな」
バクラ――というのは、あっちのバクラの方だろう。
つまりナニの大きさでいえばオレ様大なりボス。
そんなことを考えて優越感を感じてしまうは男の性である。性器を大きいと表現されて喜ばない男はいない。
「でかすぎて食いきれねえってか。抜くか?」
「や、だ、意地悪ッ」
即答が嬉しい。了ははくはくと息を乱して、何とかこわばりを解こうとしている。健気な様子に感じ入った雄がまたぞろ熱を上げて、ああしまったこれでは逆効果だ。
「大丈夫だって、入ンねえわけねえ。そういう風に出来てんだからよ」
子供を産むことが出来るのだから男性器が入らない訳がない。おおざっぱな理由で盗賊王は腰を進めていく。張った部分さえ通り過ぎてしまえば後は惰性で入り込めるだろう。
全く、了でなければこんな面倒くさい真似など絶対にしない。母音ばかりの切れ切れた悲鳴を上げて、それでも何とか飲み込もうとする女――了だから、可愛いなどと思うのだ。
「っ、あ、ぁあ……ッ!」
ずるん、と、無理から滑り込んだ感触がした。
肉が馴染んで、雄を受け入れる。思った通り一度入ってしまえば残りは容易かった。
ようやっと根元まで埋めることが出来、盗賊王は熱い息を吐く。きつすぎる締め付けは悪くない。今すぐ強引に穿ちたい。
「何でっ、こんな、違うのっ」
律動を止めたのは了の呟きだ。男の人って意味わかんない。涙声で云う。
違うと云われても、盗賊王としてはこれがデフォルトである。了を慣らしたのがバクラなら、バクラのそれが軟弱だったから悪いのだ。自分は悪くない。
「そんなに違うか」
「違うよ、ぜんぜん、」
「へえ、どんな風に違う?」
軽く揺さぶって促してみる。了は壁に爪を立てて耐え、こちらの腰が抜けそうな甘ったるい悲鳴を上げた。
「教えてくれよ、オレ様のはどんな感じがすんのか」
「っや、焦らさないで」
「了が喋ったら突いてやるよ。ほら、云えって」
貧乏ゆすりのような微妙な振動を加えてやると、了は猫のように腰を捩って鳴いた。やだやめていじわるしないで。そう云いながら、内部は喜んで雄を締め上げる。バクラの教育の賜物か、はたまた生来のものか、了はこうやって責められるのが嫌ではないらしい。
しばらく足掻いた後、耐えかねた唇が開く。正面から見ていたらより硬度を増させただろう、極上の嬌声だった。
「っ……だから、っ、おっきい、とか」
「とか?」
「あつくて、ふと、い、とか」
「嬉しいじゃねえの」
「中、バクラのでいっぱいになってる、感じ」
狙って云っているのかと疑りたくなるほど、了は男を喜ばせる言葉を並べる。軽く上半身を倒し側面から表情を伺うと、斜め後ろから見る了の横顔は恍惚に染まっていた。
嘘の匂いがしない、とろとろに蕩けた愛しい女の顔。昂らないわけがない。
「っあ、でも、」
「ン?」
「奥のとこ、まで、届かない……」
それがすごくじれったくて、たまんない。
舌の足りない声が、そう訴えた。
つまりあれか短いとか。大きさは勝っているが長さでは負けているとそういうことかと盗賊王は口を尖らせた。
(上等じゃねえか)
ああ、何故男は自分の一物を他人と比べて勝りたいと思うのだろうか。万国共通の競争意識だ。
「イイとこに届かねえって?」
「ん……」
少しは云いづらそうにすると思いきや、素直に了は頷いた。男のプライドを立てたり折ったりと無神経――理解できていないだけか。なれば仕方ない。
盗賊王はぐっと了の腰を掴み直し、上半身を起こした。
「あ、っ」
遠くなる体温を不安がって、了が首を巡らせこちらを振り返る。
乾いた唇をひと舐め。そして、笑み。
「だったら、届くように可愛がってやるよ」
「え――」
応じた己の笑みはさぞかし愉悦に染まっていただろう。
絡みつく肉を引きずって、盗賊王は手加減なしに、思い切り引いて突いた。
「ひッ、あ、や――あッ!」
何の予備動作も無い一撃に、了の身体が大きく跳ねた。
雑談を一刀両断した注挿だ。狭い内部への心遣いなど一切与えない。腿と尻がぶつかり合う高い音が響き、了の悲鳴が重なる。
「おら、これでも届かねえ、か」
突く勢いで盗賊王の声も途切れる。生温い侵入では不満だというのならこうするのが一番手っ取り早い。
深く引いて深く貫く、その繰り返しがどれだけ響くか、その身を持って体感するといい――盗賊王の頬から、悦楽の汗が垂れて散る。
「ひぅっ、う、あぅ、あ、ばくら、あッ!」
突き上げるごとに、了は死にそうな声を上げた。長い髪を振り乱して何度も首を振る、その癖嫌がる素振りなど欠片も無い。
深く挿して漸くぶつかる行き止まりの部分で、ぎゅうっと締まる雌の道。ここだろうと問えば、遮二無二こくこくと頷く姿が堪らない。
「そこ、あ、そこ、きもち、気持ちい、っ」
「いつも、ッあいつにこうして、もらってんのか?」
油断すると舌を噛みそうだ。それでも緩めるつもりにはなれず、肌と肌がぶつかる打音の中で盗賊王は問いかけた。僻みでも妬みでもない、ただ知りたいというのだけの質問だった。
了は壁に爪を立てて耐えながら、あうあうと情けない嗚咽を漏らす。震える舌がどうやらちがう、と云っているようで、盗賊王は再び上半身をかがませ顔を近づけた。
「ちが、違う、バクラ、のは、あ、っ」
「ん、聞こえねえ」
「バクラのは、あ、そんな、強いのじゃ、なくて、もっと、小さく、んんっ」
なるほど、つまり――
「こういう小刻みで苛められてた、ってことか」
「ッ――!!」
言葉の通り、深く埋めた場所で小刻みの振動を与えてやると、了はぎゅうっと背中を丸めて声にならない声を上げた。
恐らく、これがバクラ――ボスなら、長さで優る雄でもって了の悦い箇所を執拗に攻められたのだろう。盗賊王では微妙に足りずに、だからこそ了はぶるぶる震えて切なげに腰を振る。もっと奥、もっと深くに頂戴、そこじゃなくてもっとこっちにきて。そんな風に、身体中が盗賊王を求めて暴れている。
「あァ――」
ほんっと、堪ンねえ。
もう何度思ったか知れない。本当に、この女は最高だ。
恍惚の溜息を吐くと、その息すら敏感に感じたらしい了は喉を反らせてまた鳴いた。自然、盗賊王の頬に頭の側面を擦りつけるような動きになる。正しく猫が甘える動きだった。試しに手を伸ばして喉を擽ってみたら、甘えた様子でくう、と鼻から息を漏らす。
「っも、あ、出ちゃう、すご、びりびりって、するっ」
「は、イきそう、てか?」
「ん、うん、イっちゃう、イきたい……――っ!」
何てあられもないおねだりだ。不覚にもグッときた。
危ない所だった、このままではこちらが先に昇天してしまう。盗賊王はぐっと腹に力を籠め、先に達する愚を避けるべく了への刺激を強めていく。
「バクラ、ぁ、っ、んんッ……!」
声は甘さを増すばかり。答える代わりに後ろから手を回し、ささやかな胸を辿る。激しく揺さぶっても震度一の可哀想な乳房を揉み上げると、きゅっと中が締まった。
陥落寸前だ。あと一押し。
「なァ、了」
「ひゃうっ、う、う……?」
「やっぱりオレ様は、地味に苛めるのは性にあわねえから、よ」
だから――
囁きと共に、動きが元に戻す。
「オレ様のやり方で、イかせてやんよ」
深く引いて深く挿す、抉るような注挿。掠めていた快楽のポイントをぐりりと押し上げる――了が、今宵一番あられもない絶叫を上げた。
「あっ、あぁあ! やぁ、イ……ッ!」
それは明らかな、絶頂の悲鳴だった。
電気刑に掛けられた罪人の如く、了の四肢が強く突っ張る。
「あ、っ――」
狙い通りに先に絶頂した了。その唇からだらしない音が漏れていく。
身体は未だ繋がれたまま。漣のような震えがくびれた腰を中心に広がり、互いの体液が混ざり合う内部で熱い何かが溢れるのが分かった。
隙間なく埋まった所為で逆流できずに、濃密に満たされる肉の密室。
息を荒げ、盗賊王は思う。このまま中で出したらどうなるだろうか。
「――っ、く」
想像したら、ゾクリときた。
孕む危険性がある分、外に出すべきだ。そんなことは分かっている。意味なく望まぬ子孫を作るつもりはない。
けれど確かに今、了を孕ませたいと思った。
理性の一枚向こうの、本能と呼ぶべき原始的な部分。雄という性別を突きつけられる単純思考。雌に胤を着けたいという願望が燃える。
今ここで何も考えずに中出ししたらさぞかし気持ちが良いだろう。白濁とした欲望を了の中に注ぎ込んで、中からも外からも、この細い身体を犯せたら。何て危うい、甘美極まりない快感だろう――
「ば、くら ぁ」
流されそうになったところに、了の声が響いた。
女の絶頂は長い。抜き差しされながらも続いているオルガスムスの所為で腿の筋肉が小刻みに緊張と弛緩を振り返している。その微振動は、踏みとどまる盗賊王の背中を押すには十分すぎた。
なんとか振り向いて青い瞳をこちらに向ける、いとしいいとしい女の泣き顔。締め付けられ、精を搾取し啜り上げる雌の道が甘く収縮して、そして、
「く、ぁッ」
耐え切れず、歯の隙間から声が漏れる。
勢いよく引いた瞬間の射精は、了の内部ではなく尻に、腿に、背中にまで勢いよく放たれた。
「――は、……ッ」
危なっかしい雄の本能。寸でのところで理性によって駆逐されたのは口惜しがるべきか安堵すべきか。はたしてどちらなのだろう。
いやいやそんなことよりも、まるで蝋を垂らされたように精液で汚された肌を眺める方がずっと有意義だ。などと思うあたり、やっぱり自分は単純だと思う盗賊王である。
「あー……」
「はー……」
溜め息は同時だった。
事後にどっとのしかかる倦怠感が二人を脱力させる。長く息をつく盗賊王の目の前で、まず了がずるずるとタイルへとへたり込んだ。続いて盗賊王もその場に尻をついて座り込む。
と、座椅子の要領で了が寄りかかってきた。
互いに何かを喋る気が起きない時間、およそ五分といったところか。湯気など既に欠片も無い冷えたシャワーブースで、二人は嵐の呼吸のまま暫くぼうっとしていた。
「ね、え」
「んー?」
「いいの? 中、しないで」
中に出さなくて良かったの。
こともなげに了は問うてきた。まるで、望めばそれを許したとでも云わんばかりに。
「何だ、オレ様に種付けして欲しかったのかよ」
「んん、ちゃんと薬飲んでるから平気だったのにって思ってさ」
そういえば寸止め――だったか。
「てことはあいつは基本中出し野郎ってことか……」
「たまにね。いつもはちゃんとしてるよ。でも今日は」
「今日は?」
「ボクが、中に欲しかった気分だったんだよね」
あははと了は笑い、後ろ頭を盗賊王の胸に擦りつけてきた。
「だからよかったのに、出しちゃっても」
ていうかして欲しかったなあ、などと。
事後の気だるい甘さをごっそりそぎ落とす、あっけらかんとした声で了は云った。
辺りに漂っていた濡れた気配が蜘蛛の子を散らすように逃げていく。言動はセックスについてのそれでありながら、どうしてこうも色気がないのか。ほんの数分前の壮絶な艶は錯覚だったのかと、がっくり首を落とす盗賊王だった。
そう、あれだ、何と云うか。
「そういうことは先に云えっての……」
無駄に理性的になって損した。
がしがし、と頭を掻いて項垂れた盗賊王の顎が、丁度了のつむじに当たる。何がおかしいのか了はきゃらきゃらと笑って、ごめんねーとおざなり極まりない口調で謝った。
そして続けて、
「おっきいバクラもやっぱり鈍いんだね」
そう、未だ笑いを含んだ声で云った。
「おっきい?」
「キミのこと。身体が大きいから、おっきいバクラ」
「ナニのでかさじゃねえのか。で、何だよ鈍いって。てめえにだけは云われたくねえぞ」
「まだわかんないならやっぱり鈍いよ」
くるん。器用に身体を反転させた了は、盗賊王の胡坐の間に収まり向い合せになる。
濡れた髪に縁どられた白い顔。今は情事の所為で仄かに薔薇色に染まっている。薄暗闇でもきらきらと輝く青い瞳は矢張り綺麗だった。長い睫が瞬きをすると、溜まっていた水滴がぱちりと弾けて小さく散る。
謎めいた、不思議な瞳。深い青が盗賊王を覗き込む。
開く唇は柔らかく開いて、鈍感、と囁いた。
「もう一回したいって、云わせたいの?」
「お……」
何を思って思わずか、うっかり口から母音が零れた。
不覚にも面食らってしまって、その顔を見た了がにいっと唇を持ち上げる。ボク開き直ったらすごいんだよ、と、よく分からない自信に満ちた囁きが更に乗った。
「すごく楽しかった。気持ち良かったから、もう一回したいな」
そうして、初めて了から唇を触れられた。
ふにゃんと押し付けるだけの接吻だった。児戯に等しいただのキス。なのにくらりと頭が熱くなる。
射精によって性欲が委縮したこのタイミングで、何たる復活の早さだろう。二ラウンド目に誘う了のキスはそれだけ効果があるということで、それもこれも惚れたが故か。
「あいつが帰って来ちまうかもしれねえなァ?」
ぐんと漲った欲に背中を押され、盗賊王は了を強く引き寄せた。今度こそ中にたっぷりくれてやろう。煽った分の責任はきっちりとって貰わねば。不思議と持ち上がる口元と己が雄に、了も声を上げて喜ぶ。
「どんな顔するかな」
「仲間外れにしちゃ可哀想だからな、混ぜてやろうぜ」
「賛成!」
ノーマルプレイに固執しないのはバクラのおかげか。実に元気のいい返事が返され――そうしてもう一度、此度は噛み付く情欲のキスをした。
何もかもお見通しのボスの帰宅が待ち遠しい。お望みどおり仲良くなって差し上げましたと身を持って証明するためにも、二ラウンド目はリビングのソファを会場にしようと盗賊王は思った。
外は既に朝。されど、体内時計が宵の口だと主張する以上、時刻はまだまだ夜のうち、である。