【♀】am11:48【R18】
絵茶でキリサメさんに描いてもらったばくばく♀のSSであります!
二心二体、双子バクラと了♀です。そして学校で保健室でセクロスです。
微かな衣擦れの音すら鼓膜が拾い上げる。恐ろしく静かな保健室の隅、三つあるベッドのうちの一番奥のそれにだけ、薄緑色の薄いカーテンが掛かっていた。
四方を仕切る内側でぽとりぽとりと零れるのは、シーツが擦れる音と吐息交じりの話し声。保健室特有のつんと鼻につく消毒液の匂いに交じって、甘いような気怠いような空気がベッドから確かに滲んでくる。
四時間目の授業を放棄して、白い髪を白いシーツに散らばせた了が、圧しかかるバクラの背中をかりかりと引っ掻いた。イテェ。眉間にしわを寄せたバクラが唸るように云う。
「今更嫌がんじゃねえよ。分かってて来たんだろうが」
「知らなかったよ、お前が保健室にいるなんて。知ってたら来なかったもん」
大体お前なんでこんなとこにいるの。了は綺麗な形の唇を尖らせて云った。
「数学、出ないとやばいって云ってたじゃないか」
「いンだよ、腹が痛ぇってことになってんだ。生理痛だ生理痛」
「子宮もない癖に何ふざけてるの。あとその冗談は最低の部類だと思う」
「そりゃあスイマセンデシタ。それよりいい加減足開けよてめえ」
剣呑な会話を続けながら、不機嫌な顔をしたバクラが了の太腿に手をかけた。既に上半身の着衣はお互いに乱れ、バクラのワイシャツは釦が全て外れだらしなく開いている。了はというとリボンタイこそまだ首に残っているものの、胸のあたりだけをすっかり開かれて下着もずり上げられ、白雪のような肌を晒している始末だ。赤い鬱血の後がちらちらと残り、愛撫された分だけ硬くなった乳首がシャツの布地を押し上げている。
その箇所を意地悪く前歯で齧ってやりながら、バクラはきゅっと口を結んだ了の顔を、上目使いに睨み付けた。
「したくねえのかよ」
「……そういうわけじゃ、ないけど」
ないけどさあ。
了はもごもごと口ごもり、やにわにそっぽを向いた。
バクラもつられてそちらを見やり、視線の先には何があるかを確認する。カーテンの隙間から見えるのは廊下へと繋がる扉。無論鍵はかかっていない。
その扉の向こうを、教師だろうか、硬い靴音がかつかつと通り過ぎていくのを聞いた。了の唇が更にきつく結ばれるのが視界の隅に映り、ははあ、とバクラは理解する。
「声でけえもんなあ、宿主サマは」
「……」
「でけえ声で泣き喚いて、誰か来たらどうしようってか?」
「……鍵かけてきてよ」
「お断りだな」
「だったらしない」
にやりと嫌味に笑ったバクラの額をぐいと押して、了は身体を起こそうとした。押しのけられても口元の笑いが冷めないままなのを訝しむことが出来ていたら、了はこの先無事に、保健室に巣食う毒蜘蛛のような双子の片割れから逃げ出すことが出来たのかもしれない。
閉じていた足をそのまま縮め、片肘をついて起き上がろうとしたところへ、不意に、足首を圧迫される。
何事かと思う隙もなかった。それこそ蜘蛛のような長い手指が了の足首を掴み、なんの予備動作もなく思い切り引っ張った。
「わっ……!」
声を上げながらも物理の法則に従って、了の身体は枕を巻き込み、再び仰向けにベッドへと沈められた。足首に絡む厄介な指はそのまま力を加え、まるで赤子の手をひねるように簡単に、了の足を大きく開く。あれよと云う間に大きく開かれた足と足の間にバクラの身体が割り込み、結果、先程よりもひどい体勢が出来上がったというわけだった。
「や、ちょ、やだって云ってるんだけど!」
「聞こえてんぜ。てめえが嫌だっつって、何でオレ様がやめてやんなきゃいけねえんだ」
「信じらんない!云っとくけどね、見つかったらやばいのはボクだけじゃなくてむしろお前の方なんだからね!?」
「ぎゃあぎゃあ喚くんじゃねえよ、それこそ今すぐ見つかっちまうぜ」
じたばたと了が暴れるのを面白がる、バクラの顔はいつになく楽しげだった。掴んだ足は無論逃がさず、軽く捻りながら膝の裏を肩に当てる形で担ぎ上げてしまう。短いスカートが腿を隠しきれずにめくれ上がる。それを抑える了の手は、動く前にバクラのもう片手にあっさりと捕えられた。
ぐい、と、バクラの膝が進められる。足の間に潜り込む尖った膝の骨が、下着越しに了の性感をつついた。
「んっ……」
瞬間、了の腰が甘く震えたことをバクラは見逃さない。
ああだこうだと文句を言いながらも、きっちりと前戯はすませているのだ。制服と下着と、二枚の布地を越えて伝わる局部の体温はあからさまに熱い。それどころか明らかな湿り気すら感じさせる――感度の良い身体に内心で賛辞を送りつつ、バクラは上半身をぐいと近づけた。
「今ここでやめたら、残りの授業、てめえはココ濡らしたまんまで受けなきゃなんねえなあ」
「ッ……!」
「そういうプレイがしたいってなら、まあこの場は引いてやってもいいけどよ」
どうしたい?
意地悪な蜘蛛は唇を三日月に吊り上げて、了に向かってそう問うた。
問われた了はぎゅうっと唇を噛み締め、きつくバクラを睨みつけるしかない。そんなこと、了の身体を熟知しているバクラなら聞くまでもないことなのだ。快楽にことさら弱い了が、残りの数時間――昼休みを含めたらもっと長い――を、火照らせたまま耐えられる訳がない。我慢できずにバクラの手を掴んでどこかに連れ込むことになるのが関の山だ。にやにや笑ってどうした宿主サマ、オレ様に何か御用ですかとふざけた口調で云われその上で続きを懇願するよりも、今陥落した方がずっとましだ。
それにもう、我慢できる状況でもない。硬い膝は気まぐれに軽く振動を起こして、敏感な箇所をじれったく攻め立てる。このまま自ずとと擦りつけてしまえたらどんなに良いか。
たっぷり三分間、唇を噛んで睨んだ後、了は小さく、手を離して、と云った。
結果が分かり切っているのだろう。バクラは唇を持ち上げたまま手首の拘束を解く。
解かれた手は少し痺れて痛んだ。その手でもって、了はおずおずと、バクラの背中に手をまわした。先程爪を立てた個所に、今度は指先を甘く滑らせる。
「……ひどくしたら怒るよ」
「オレ様が今まで、宿主サマにひでえことをしたことがあったかい?」
そりゃあもう数えきれないほど。
と言い返してやる前に、バクラの指先は腿を伝い、下着の隙間にまで入り込んできていた。
やっぱりこいつは嘘つきだ。きつくシーツを掴んで耐えながら了は思った。
ひどくしたら怒ると云ったのに、バクラの手指の動きには全く容赦がない。脱がすのも面倒だったのか、下着の隙間から忍び込ませた指は潤んだ亀裂から救い上げたぬめりを絡めて陰核を小刻みに苛めてくる。了は中を抜き差しされるよりもその小さな肉芽を弄られる方が好きだ。圧迫感も痛みもなくただ際限なく気持ちがいい。そこをたっぷりと弄られて絶頂することも多い。
流石に保健室でそれをさせるつもりはないようで、バクラは散々そこを苛めた後、言葉少なに避妊具を着けた後に腰を進めてきた。
ひどいのはそこからだった。もはや逃げるつもりなど欠片もない了が自ら足を抱えて開いたそこへを、バクラは一息に己の性器で貫いたのだった。
「いッ……いた、ゃあッ!」
甘く痺れる前戯から一転して突き落とされた痛みに、了の身体が激しくのけぞる。反射で締め付けた所為で余計に狭くなる肉の道を、バクラは容赦なく抉っていった。男女の身体のつくり上、一度入ってしまえば抵抗なく進む男性器はみちみちと密着した音を立ててリョウの中に埋まる。
「ひど、ひどいよ、優しくやってよ、」
「あ? これでも十分優しくしてんだがなァ」
嘯くバクラが頬を伝う汗を舐め、笑う。
「本当にひでえのは、宿主サマをよがらせてでけえ声上げさせて、教師やら生徒だかをここに呼び込むことじゃねえの? レイプされましたって言い訳ができねえくらいいい声上げさせてやったら、お互い共犯になるしなあ」
「なっ……」
「そう考えてみりゃあ、こうしてちょっと痛くしてやるのが本当の優しさってもんじゃねえ?」
なんという屁理屈だろうか。バクラがひゃは、といじわるな笑いを語尾につけて笑う。その振動に邪魔されて、了は二の句を告げられない。
空っぽの内臓が埋まる感覚。バクラが中に入っているだけでもうこの身体はじくじくと疼くのに、言いたい放題言っている間、この男は決して動いてくれないのだ。シーツを掴んで耐える了を真上から見下ろして、余裕の笑みまで見せてくる。
本当に余裕だけがその顔に浮かんでいるのなら、了とて反感を覚えたはずだ。抵抗を奪うのは、余裕を見せつけておきながらも爛々と欲情しているバクラの目の色、そのいやらしさ。本当は外聞など考えずに突き殺してやりたいという、それくらいに危なっかしい欲望の色がいけない。被征服者であることを自覚して、了の背中がぞくりと戦く。
病的なまでに白く美しい頬に、バクラの頬を伝った汗がぱたりと落ちた。
それがスイッチになったのだろうか。
バクラの手が了の頼りない腰を掴んで――唐突に、律動が始まった。
「っひ、ぅッ!」
急角度で襲いくる衝撃に、了の唇が大きく開く。そのまま高い悲鳴を上げそうになるのを押えたのは、バクラの手――ではなく、了自らの両手だった。
声が出てしまう、抑えられない、汗ばむ手を重ねて自分の口を塞ぐ姿を見下ろして、バクラはにい、といかにも愉しげに笑った。手間が省けた。またひとついじわるが重なる。
「そうやって抑えてな」
「っ……」
「そんな顔すんなよ。もっと苛めて欲しいって云ってるようにしか見えねえぜ」
性格と性根の悪さを露呈する声は悪魔がくつくつと笑うによく似ていた。汗で滑る身体を抱えなおし、引いて打ちこんだ性器の先端に奥の奥まで突かれて、思わず腰が持ち上がる。強請っているわけでもないのに――いや、本当は強請っているのかもしれない。そこを突かれるとたまらない。痛みと痺れがまざりあって快感につながる。爪先がぶるぶると震えた。
「ん、っ、ぅう、ぅ、う」
容赦ない突き上げの勢いは、細腰では捌きいれない。ぎしぎしと盛大に軋むパイプベッド同様、了の下肢は頼りなく翻弄された。ささやかな肉のついた乳房が振動に合わせて上下に揺れ、先端の赤い色づきは揺れの所為でじりじりと痺れてじれったい。加えて、見下ろしてくるバクラの快感に煙った眼差し。口を押えて耐える姿を見て昂る、性格の悪いこの男のぎらついた眼差しがいっとうたまらなかった。
身体で身体を犯されて、視線で表情まで犯されている。保健室だということを、了は一瞬忘れそうになった。いつものように高い声を上げようと喉を開いて、はっとして息を止める。止めた時に力が入って、きつく中を締め上げる。バクラがにやりと笑って、いやらしい奴、と云った。
「案外こういうの、嫌いじゃねえんだろ、宿主サマ」
「っ……ちが、しらない……」
ふるふると首を振った。興奮した雄の目線が細く撓み、近づく。
べろり。まるで獣が味見をするように、こめかみを舐められた。
「すげえ心音」
耳の上でどくどくと鳴る鼓動を舌先で拾い上げて、バクラは云う。
「バレたらどうしようって、ビビってんのに気持ちいいんだろ」
「っ……」
「本当は誰かに見てほしいんじゃねえの? 男咥えこんで、腰振ってるみっともねえ恰好をよ」
何なら今、てめえのオトモダチをここに呼んでやろうか? バクラは律動を少しばかり緩めて、乱れ切った了のスカートの間に落ちた携帯電話を拾い上げた。飾り気のないストラップをつまんでぶらぶらと目の前で揺らし、これ見よがしにぱちり。音を立てて開いて見せる。
「誰が良い? 遊戯か?本田か? 御伽の野郎か?」
「や、やだ、やめて……」
大声を出しそうになる危うい唇を覆う手のひら、その隙間からか細い声を上げて了は首を振った。手を伸ばして奪い取ることは出来なくもないが、油断した瞬間に激しく中を責められたらとんでもない声が出る。
身体中から汗が滲んで、シーツを甘く湿らせていた。冷や汗と快感とで体温がおかしなことになっている。バクラならやりかねない、無遠慮に人の携帯電話をいじくる顔に思い切り平手を食らわせたらどんなに気持ちがいいことか。
だが、暴力よりも気持ちの良いことがすぐに了の意識から怒りを浚ってしまった。ぐっと押し込んだ性器の切っ先が具合のいい箇所に触れて、悶絶するほど足が痺れたのだ。
「――っ!!」
爪先をぎゅうと丸めて、了がぶるぶると震えだす。パシャリと何か機械音が響いたような気がしたが、それを問い質すだけの余裕はもう、彼女の中に残っていなかった。顔の高さまで携帯電話を持ち上げたバクラの顔が半分覗いて、にんまりと笑っている。撮られた。最低、と叫びたい喉に嗚咽に近い悲鳴が絡む。
「んっ、ぅ、あ、ぁ、やッ、や、」
「いいのか宿主サマ、オトモダチ呼んじまうぜ? てめえのとんでもねえ写メつきで」
「やだ、しないで、っそんなの……!」
「ギャラリーがいた方が興奮すんだろ」
「しないっ、お前に見られてる、から、こんな、変なるのっ」
クラスメイトや数少ない友人に、痴態を見せる趣味はない。視線で身体が火照るのはバクラの剣呑な目つきが滴りそうなほど欲を秘めて自分を見るからだ。だからそんなことはしないで――切れ切れになる声で了は訴えた。もしかしたら墓穴を掘った発言かもしれないと、気が付くのはずっと先のことだ。
了の訴えにバクラはぐっと詰まると、彼女の目がぎゅっと瞑られているのをいいことに、何かを早口でぶつぶつと呟いた。それからすぐに携帯を放り捨て、ぐっと身体を倒してくる。用済みになった機体は緩いスプリングの上で一度跳ねると、リノリウムの床へと落下しくるくると回転しながらベッドの下へと転がっていった。
「バ、クラ?」
急に黙ったバクラへ、了が不安げな声をかける。体重が移動して、ベッドがぎちりと危うげな終え尾を立てた。角度を変えた切っ先が、もうこれ以上は進めないほど中身を埋める。仰け反って首を振る、了の手はもう口元を押えきれない。
「だ、だめ、声、こえ、出ちゃう、いや……!」
ギシ、ギシ、と、律動にそって軋むパイプベッドの音が了の悲鳴を代弁しているようだった。戯れを混ぜたいじわるから一変し、バクラの動きが唐突に、容赦のないものに変わっている。
「駄目、だめだったら……!」
涙目で見上げると、バクラの顔がずいと近くまで寄ってきた。
バクラの形をした影が、了の白い頬を覆う。つり上がった唇には、もう、余裕の笑みは浮かんでいなかった。
「主演宿主、で、助演監督観客がオレ様、ってとこか」
「え……?」
意味の分からない言葉に、唇を震わせながら了は首を傾げる。
バクラは腰から手を離すと、了の重ねた白い手を掴み、そのまま左右へ分けてベッドに押し付けた。
これでは声が抑えられない。慌てる了に、さらにずいとバクラの顔が接近する。
「見られてえんだろ」
掠れた声がいつもより低い。不覚にも、了の心臓が不穏にどくんと高鳴った。
無防備になった唇に、がぶり。犬歯が鋭く発達したバクラの口が噛みついてくる。うまいこと悲鳴を吸い取られて、ついでに舌もたっぷり吸われた。
なんなの、と、震えながら了が問う。お応えしてるだけですけどォ? と、ふざけた口調が帰ってきた。
「ご希望どおり、てめえがイく時のとんでもねえ面、しっかり見ててやる――」
見られてるって自覚しながら、咥え込んで、イっちまいな。
露骨な辱めを口移しで伝えて、バクラが円を描くように、腰を回す。
「ッ……あ!」
ああだめだ今度こそ耐えきれない。殺しきれない。
身体で身体を、目で表情を、そして鼓膜を、声で犯された。
身体中の穴という穴から、バクラの毒を注ぎ込まれた気分だった。もはや鍵の開いた扉のことも、廊下の向こうのことも、写真を撮られたことも頭から吹っ飛んでいる。
そんなものはもうどうでもいい。時間と場所と場合の認識を完全に放棄して、了はいつものように、感情のまま、高い声を上げ――バクラはちゃあんと、それを器用に吸い取った。
壁にかかっている時計の針は、まだ十二を過ぎて居ない。
この分ならあと一戦はいける。チャイムが鳴るまでにたっぷりと堪能できるだろう。バクラは目を細め、しかし閉じることは絶対にせずに、了の痴態を目と耳と性器で存分に楽しみながら、ゴムの内側に熱を吐き出した。