【お題募集】涙の果実/バク獏

お題:バク獏でバクラが涙を流す話お願いします(涙を流した感情の有無は自由)@Milkymgmg
#短文書きたいのでなんかお題下さい

人は人の為には泣けぬという。
例えば誰かを失った時、もう戻らぬ魂を嘆くのではなく、もう二度と会えない自分が可哀相だから泣くのだ。
人はどこまでも自分の為だけに生き、そして死ぬ。
上等じゃねえか。と、バクラは思う。
誰かにくれてやるものなど何一つない。奪うならまだしも寄越されるのも気持ちが悪い。善意で飾り立てた美しい果皮を一皮めくれば、その中身は臓物の如きグロテスクな塊だ。ヒトならば目を背けたくなるような赤い色。それこそ真実だ。
頬にぼろぼろと粒が零れていくのを、気色悪げにバクラは拭った。
心の内側の檻で獏良が泣いている。その影響が肉体に出ているのだ。何度拭っても溢れてくるので、いっそ目玉をくりぬいてしまいたい衝動にすら駆られる。
おまえはかわいそうだと、獏良は言った。
もうこんなことやめようよ、と。
(嘘吐きめ)
その涙はお前自身を憐れんで、そうして溢れているものなのに。よくもまあそんな言葉が吐けるものだ。
(舐めてみろよ、宿主サマ)
そうしたら、お前にだってこの涙の意味が分かるだろう。
べろり。頬から唇まで垂れてきた雫を舐めとり、その味に目を細めてバクラは思う。
塩辛く生温かい雫。獏良の涙は偽善の果実から滴る汁と同じ、血の味をしていた。